瞑想法 その⑨ 阿字観瞑想とは
~阿字観瞑想とは~
- 密教(真言宗)で最も基本的な瞑想法
- サンスクリット語の「阿字」を観て行う瞑想法
- 阿字観瞑想に至るまでに段階がある
- 中級者~上級者向け
- 仏教(真言密教)の教えも瞑想に関わる
阿字観瞑想とは
阿字観瞑想とは、「阿字」を「観る」瞑想法で、「阿字」はサンスクリット語、すなわち梵語(ぼんご)を意味しています。
「梵」には、宇宙の根本原理という意味が込められています。そして、このサンスクリット語(梵語)は、古代インドの文学語でもあります。
阿字観瞑想は、自分は世界と一つであることを深く理解するために行うといわれています。
阿字観の「阿字」
阿字にはそれぞれ日本語のひらがなにあたる文字があります。
画像引用:梵字]
アの音は、アルファベットの初めの音であるのと同時に、すべての梵字は基本的にア音を含んでいます。そのため、根源的な音と言われています。
阿字観の歴史
阿字観は、平安時代の弘法大師(こうぼうだいし)、空海によって伝えられました。
空海は密教を体系化して、真言宗を開きました。これは、奈良時代から平安時代の流れです。
阿字観瞑想にいたるまで
真言宗では、阿字と月の絵を本尊として掛け軸にかけたものの前で行うのが一般的のようです。
阿字観までにはいくつかの段階があります。
- 第一段階:数息観(すそくかん)
- 第二段階:阿息観(あそくかん) 息を吐き、吸う際に大日如来の「ア」、大宇宙の胎動を観じる瞑想法です。
- 第三段階:阿字観の基礎、月輪観(がちりんかん)
- 最終段階:阿字観
第三段階、最終段階の月輪観や阿字観を実践していると、 鋭敏かつ不可思議な感覚を覚えることがあるそうです。
そのため、確かな経験をもつ指導者のもとで実践するように推奨されています。
阿息観(あそくかん)
数息観の段階を終えたら、阿息観へと移行します。
阿息観は、吐く息、吸う息に対して、 命の源「ア」の声を唱えることにより天地と呼吸を通わせ、「ア」の声と一つになって宇宙の大生命を感じる瞑想法です。
①数息観で修得した呼吸法により、全身が清らかな空気で満たされるのを感じたら、 体の中にある息を「ア~~~~~~~~~」 と唱えながら口からゆっくり吐き出します。
②この時、吐き出す「ア」の息が1メートル2メートルとだんだん遠くへ流れて行くようなイメージを持ちます。
③息を全部吐き出したら、「ア~~~~~~~~~」と唱えながら 鼻からゆっくり吸い込みます。これを3回繰り返します。
④3回終わりましたら、口を軽く閉じて鼻から息を吸い、 鼻から息を抜きます。 その際、出る息にも、入る息にも共に 「ア~~~~~~~~~」と心で唱えながら、「ア」の息に心を集中します。
⑤心を解き放ち、自我という枠を離れ、この世のすべての存在が、一つの大きな生命を生きていると観じます。
⑥そして宇宙の大生命を感じる全てのものは、在るがままであり、 いつも同じように存在していて、何も変わりがないと観じます。
⑦この瞑想を5~10分間続けて阿息観を終えます。 終える時は、静かに眼を開き、法界定印を解いて胸の前で合掌し、そのまま一礼して阿息観を終わります。
引用:那須波切不動尊・金乗
月輪観(がちりんかん)
心の中に満月の月の輪(満月)を描きながら、しだいに拡大していきます。
宇宙と一体となると観想するのが月輪観です。
細かく云えばその中で広観と斂(れん)観に分かれます。
1.阿字の周囲に描かれている「月輪」を見つめて、しばらくしたら目を半眼にして念じる。
2.月輪の残像を頭の中に浮かべながら、目を軽く閉じる。
3.再び半眼にして念じる。呼吸は鼻だけで行います。
1~3を繰り返す。目を閉じた際に、くっきり月が心眼に見えるようになればOK。
4.月を自分の胸の中に入れるようにと観想する。
月がぼやけてきたときには、本尊の月の輪を見て再度念じ直し、また胸の内にくっきりした月を思い描きます。
ここまでができ、はっきりと見えるようになれば、それを大きくしたり、小さくしたりします。このことを「広観(こうかん)」と「斂観(れんかん)」といいます。
5.胸中の月輪を少しずつ小さくしていく。最後に自分の胸中に納める。
この過程で、無我の境地を観想できるようになれば終了し、阿字観へと進むことができます。
胸中に入れることにより、融合して本尊の月輪と自分の心月輪は不二一体と観じて、胸中の心月輪がしだいに大きくして行くのです。
そして宇宙まで届いて光明世界に到ります。そこには月輪と宇宙が
一つになった理想世界があり、すがすがしい気持ちになります。引用:常龍寺
阿字観瞑想 やり方
息を吐いたり吸ったりする際、阿字を心の中で見つめます。
1.静かにゆっくりと長く「ア」を発声します。だんだんと声を細くしていき、最後に心に念じるようにします。
2.自分から発せられる「ア」の音が自分自身に満ちわたせるだけでなく、全宇宙に満ちわたるようにイメージしてゆきます。
3.阿字の形を観じます。掛けられた阿字の形の通りに、月輪、八葉の蓮華、阿字の三つをはっきりと心に描きます。
4.阿字の意義を考察する。自己を見つめて仏を感じ、「世界と自分はひとつである」ことを実感しながら瞑想する。
阿字の意義は、「本不生(ほんぷしょう)の理」です。
とは、
- 本不生
- 〘名〙 (「本来不生」の意) 仏語。あらゆる存在がその根本・究極において不生であり、新しく生じてくるものは一つもないということ。一切の事象の絶対性を明らかにする真言密教の説。
引用:コトバンク
仏教では、世界の創造や創造主の存在を認めておらず、すべてのものは緑によって生まれ、緑によって滅するとしています。すべては本来存在するものだといいます。
阿字として表現したものが「阿字本不生」です。
- 阿字本不生
- 密教では,宇宙のあらゆるものは「阿」という字音のなかに含められるとし,すべてのものが本来存在するもので,原理そのものが現れているのだとする。それらは宗教的には大日如来自身の内面的な悟りと同一であるとする思想。
引用:コトバンク
阿字観瞑想 おわりに
阿字観瞑想は、なかなか奥が深いようです。洗練された指導者に指導を受けるのが良いでしょう。
阿字観瞑想は、本なども出されているようです。参考にしてみてください。